川崎市にあるサービス付き高齢者住宅に住む93歳の義母に、昨晩、今週二度目の電話をした。
その後の様子と、生活に支障は出ていないかを尋ねるためと、「娘について書いた本を送るから」と予告するためだった。(※欄外の「My Bookstore」参照。)
この本を義母に送るかどうか、かなり悩んだ。
孫が軽度知的障害者であることは義母はもちろんわかっている。
しかし、高校時代に大変ないじめにあったことは、今まで一度も話したことはなかった。本の冒頭はこの「事件」から始まっている。
認知症は全くないけれど、鬱傾向にあるだけに、ショックが大きすぎないだろうか?
ショックの大きさでは、長男の死をこえるものはないと思う。
孫娘に関しては、辛い時代があったけれど、それを乗り越え、前向きに明るく元気に生きていることを、この本を通して知ることができるはずだ。
そして、義母にとっての息子が、障害児の父親として、ある時期から真剣に娘と向き合い、自身も成長していく過程も読み取れると思う。
そして、私たち家族の、海外での変化に富んだ生活ぶりも、改めてよくわかってもらえるだろう。
多分今まで、義母が知らなかった息子の一面がわかり、感慨深く受けとめてくれると信じている。
義母の人生の二つのもっとも大きな出来事(広島での被爆体験、1950年代に44日間かけて、幼な子二人連れてリオデジャネイロまで船で渡って暮らしたこと)を、最近、取材してまとめたが、そのプロセスを通じて、わたしは義母の芯の強さを再認識した。あんなに、細く、弱々しく見えるのに。
だから、義母に、私たち夫婦の、ありのままの姿の養育奮闘記を読んでもらうことを決心した。
病気や事故で伴侶を亡くす夫や妻以上に、血のつながった我が子を亡くす母親の悲しみは、比べ物にならないほど深くて大きいと、義母を見ていてつくづくと思う。
最近では本をそれほど読まなくなった母が、長男について書かれたものは、何度も読み返しているようだ。息子が生きた証を、なぞって確認しているのだろう。
だからこの本が、その息子を更によく知る手がかりとなればと願っている。
ーーこの時期、最後はやはり、今回の、そして過去の幾多の、衝撃的な自然災害で、大切な身内を亡くされた方々の悲しみの報道と重なってしまう。