60からのしあわせさがし ~bistrotkenwoodの日記

徒然日記、料理教室、学習障害、お一人様、外国との縁

ラブレター !?

「それって、ご主人へのラブレターですよ」

カルチャーセンターの教室に入る直前に、一緒に受講している80代の男性Bさんからポツリと言われた。

「!…???……」

ーー話はさかのぼる。
毎週月曜日、カルチャーセンターで実用書道の講座をとっている。働いていたときに必要と思ったのがきっかけだったが、先生のお人柄と字の素晴らしさに惹かれて、退職後も細々と続けている。午後のクラスは受講者が少なく、わずか5人。
93歳の男性Aさん、くだんのBさん、私を含む60代女性2名、そして若いすてきな女性。先生は、80代に見えないエネルギッシュで品がよい女性講師。

Bさんは、私より後に、奥さまとお二人で入門され、机を並べて半紙に向かっていた。二人で背比べするように書に励む姿は、老後の夫婦のひとつの理想の姿に映った。

ところがある時から連絡なく姿を消され、みんなで心配した。一年以上経った今春、お一人で戻ってこられた。奥様に病気がみつかり、献身的な看病もむなしく亡くなられたという。

戻ってこられた当初は、自分の身の置き所に困っているようなご様子で、鎧を着ている感じだった。
しかし半年経ったいまでは、鎧を脱ぎ捨て、色々とお話をされるようになった。

11月は、奥さまの一周忌。
杖をついているBさんが持ち帰れるサイズの小さなお花を差し上げた。

「こういう感じの花、家内が大好きだったんですよ! 家内が喜ぶな~」

袋の中の花束をのぞき込みながら、お顔がやさしくほころんだ。

f:id:bistrotkenwood:20191119191525j:plain
[ ↑これよりもず~っと小さいお花でしたが…]

「お寂しくていらっしゃいますでしょう?」
「いつになったら寂しくなくなるんでしょうかねぇ? どのくらいかかりましたか?」
夫を亡くして5年になる私に尋ねられた。

私は、夫が亡くなって間もないときに恩師に誘われて作文講座に入り、文章を書くようになったのがグリーフケアになったこと、そして「食」や「旅」などの課題が出されると無意識のうちに、夫の好物や好きだった場所を書いていた話をした。

すると、冒頭のセリフを口にされたのだ。
そして小さくニヤッと笑われ、ちょうど扉が開いた教室の中へと入っていってしまった。

私たち夫婦は「戦友・同志」のような関係だったので、意表を突かれた。
しかし、なぜか素直にその言葉を飲み込んだ。
同時に私もまた、フッとほほえんでしまった。

海外経験が豊かなBさんは、きっと、半世紀以上にわたって苦楽を共にされた天国の奥様に、老紳士にしか書けないラブレターを書いていらしゃるのだろう。

*************

※ちなみに、9/24のブログに掲載したエッセー「クスクス」が、私の夫への一通目の‘ラブレター’となるわけだ、(*^-^*)