60からのしあわせさがし ~bistrotkenwoodの日記

徒然日記、料理教室、学習障害、お一人様、外国との縁

ダイヤモンドダスト

一月のグリンデルワルトで、ダイヤモンドダスト
に出会えた。この世のものとは思えない美しさだった。

凍てつく朝、アイガー北壁を真正面に見るゲレンデに、朝一番に下り立ったときだった。

水蒸気の細かい結晶が朝日を受け、ダイヤモンドの粉のように大気中をキラキラと舞う現象だ。まるでディズニー映画「ピーターパン」に出てくる妖精ティンカーベルの回りで舞う粉のようだ。

極めて限られた条件が重なったときにしか見られないらしい。スイスで2シーズン、数え切れないほどスキー場に通ったが、ダイヤモンドダストに出会えたのはわずか二回だけだった。

雲一つない快晴。夜間の放射冷却のためだろうか、空気は「澄む」を通り越し、清められている。
朝日を浴びて純白に輝くアイガーとユングフラウが、キリリと迫ってくる。
この「真空」にダイヤモンドダストだけがキラキラと舞う。

すべてが息をのむほど美しかった。

アイガーに向かう稜線を、少し先まで滑って立ち止まっている夫の脇までゆっくりと進む。ダイヤモンドダストが私たちを包み、舞う。

「神々しい…」
夫と顔を見合わせたとき、二人同時に口をついて出た言葉だ。
目の前の山に神が宿っているように思えた。

極楽浄土の冬景色、あるいは天国の冬の園はこんなところなのかもしれない。

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[この日の写真を探しているが見つからない。
撮らなかったのかも知れない。
スマホ誕生よりもずっと前。
氷点下10℃以下の朝、スキーの手袋をはずしてデジカメを取り出して撮るのは一仕事。
ましてや、ダイヤモンドダストは、素人には撮れない。]