60からのしあわせさがし ~bistrotkenwoodの日記

徒然日記、料理教室、学習障害、お一人様、外国との縁

北国ベルンの早春

ベルンでは、3月の声をきくと、ようやく長い冬が終わり、春の訪れを感じる季節となる。
今年も3月を迎え、ベルンの早春を思い出している。
10年前の3/1に、東京に住む叔母に送ったメールをいま読み返し、“郷愁”に近い思いに浸っている。

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Jおばさま、
[冒頭、略] スイスは昨年、秘密口座の預金者たちのブラックリストの一部公開を国際社会から迫られ、国の存亡にかかわると大騒ぎしていましたが、蓋を開けてみると、黒字収支だったとのこと。スイス国民の質実剛健な気質に支えられた底力に妙に感心しています。
こちらにきて、スイスの名士の方々とお会いする機会があるのですが、皆さま口を揃えて「スイスはわずか百年前までは大変貧しい国でした」と言われます。
そのスイスが世界のトップクラスの国に成長し、そして、周りの先進国が続々と経済不況にあえいでいる中でも、堅調な水準を保っているところに、スイスのすごさを感じます。
ベルンに住んでみて、そして色々な方にお会いしてみて、みなさんに共通した素朴さと堅実さに感心させられます。
(ジュネーブは「スイスらしくないスイスである」ことが今回の赴任でよくわかりました。)

お会いするスイスの方々の多くはスキーやトレッキングの愛好家で、山の話でいつも盛り上がります。
ベルンはほんとうに小さい町なので、目抜き通りを歩いていると、カジュアルな格好でスキー板を手にしたスイス高官夫人とばったりと出会い、「このスキー板、セールのチラシでみたから買ったところなの。主人の誕生日プレゼントなのヨ」といった会話になったりします。
飾らないフランクさが私と波長が合うせいか、ベルン暮らしを大変気に入っています。
本当の豊かさとは、なんだろうか?とつくづくと考えさせられます。
ただ総人口が700万人余りの小国だからこそ実現可能な生活水準の高さであり、日本とは比較することはできないとも思います。

ベルンは、グリンデルワルトまでが車で1時間という贅沢な立地条件なので、週末は(夫と)二人でスキーを楽しんでいます。私たちが「若く」感じるほど老齢の夫婦がスキーを楽しんでいて、体力的にもたくましいスイス人に感心させられています。
(夏のトレッキングもしかり。独り歩きのおばあさんとけっこうすれ違います!)
もしかすると乳製品王国であることも、健脚に一役かっているのかもしれない、などと想像したりしています。
今日から3月1日。昨日からフェーン現象で、当地のこの時期としては信じられないほど春めいた陽気です。(ベルン近郊で15℃、グリンデルワルトでさえ4℃)
朝から快晴で、寝室の窓から、(街路樹の)菩提樹の枝を透かして、真っ白に雪化粧したベルナーオーバーラントの名峰が一望できます。
山岳部出身のHおじさまと共に、いつかぜひスイスの名峰の景色を、ゆっくりとご覧いただけたらと願っています。ぜひぜひ私たちがここにいる間に、遊びにいらしてくださいね。
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[右手の三山がアイガー・メンヒ・ユングフラウ]
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そちらのお庭も春の気配がいっぱいで、お楽しみが増えていることでしょう。春の遅いベルンでも、このところの陽気に誘われて、暗いうちから美しい声の鳥がさえずり、玄関前の生け垣の根元に、可憐な小花たちが咲き始めました。[以下、略]

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明るさに満ち溢れる平穏な春の訪れが、今年はことさら待ちどおしい。