ピューターと呼ばれる錫を主原料とする合金がある。ヨーロッパでは古くから「貧者の銀」、庶民の金属器として食器から燭台まで作られ使われてきた。
今月から有志の参加で、細々とながら料理教室を再開する。アメリカン・カジュアルがテーマのメニューなので、アメリカのピューターをテーブルのワンポイントに使ってみようと思いついた。今年始めにホームに入居した母の家を片付けていたときに出てきたものだ。
裏をよく見ると「Williamsburg(ウィリアムスバーグ)」と彫られている。アメリカ国民にとっての「歴史ある町」だ。町全体が、明治村のように、18-19世紀当時のように復元されている。
60年代に父の仕事で東海岸に住んでいたときに訪れたのを思い出す。その時に買ったもの、または、その後アメリカの方から記念品としていただいたものなのだろう。
「handmade」とも刻まれていて、槌で打ち出した跡に温かみを感じる。銀よりも鈍い輝きが、独特の味わい深さを醸し出している。
半世紀後、夫とヨーロッパに暮らしてみると、地方の館や郷土史資料館などでピューター製品をたびたび見た。インターネットのお陰で、ヨーロッパ各地のピューター職人が新大陸に移り住み、アメリカ国内でピューターが広まったことを今回知り、納得した。
時空を経て、アメリカとヨーロッパが自分の中で繋がったような不思議な感覚にとらわれた。