60からのしあわせさがし ~bistrotkenwoodの日記

徒然日記、料理教室、学習障害、お一人様、外国との縁

あるアーティストの死

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人生は、今という時を大切にし、精一杯生きなければならない、とつくづくとおもった瞬間があった
火曜日の夜、親友から、知り合いの谷口広樹氏というアーティストの個展が私が住むエリアのギャラリーで開催中なので、よかったら見に行ってというメールが入った。

メールを読んでショックだったのは、作家ご本人が、会期中の8/30に急逝されたということだ。
翌日に、Googleマップを頼りにギャラリーに向かった。いつも通っている整形外科の手前の細い道を入ったところに、そのギャラリーはあった。すっきりとしたガラスのウィンドウを透かして、ライティングされた空間に点在する作品たちが遠くからも見えた。こんなにステキな場所が身近にあったのだ。
https://yorocobito-g.com/category/now/
入り口を入ると、私好みの色調とタッチの作品がゆったりと並ぶ。前日まで全く知らなかった作家なのに、不思議と昔から知っているような温かさで迎えてくれた。
「ほんとうにステキ。こういうの好き…」
心の中で呟きながら一点ずつと向き合った。
私のあとにもポツリ、ポツリとギャラリーを訪れる人。
「大学の同級だったんです。まさか…」と絶句する男性。作家のプロフィールを見ると、私と同学年で60代前半。
「作品を飾っていたときは、とてもお元気そうだったのに。いまだに信じられません」とギャラリー・スタッフ。「来春、大学を定年退職され、これからの制作活動がますます楽しみといわれていたのに…」
次に、「新聞で訃報を知りました」と私よりも年配の女性。みんなみんなショックを受けている。
私だけは、友人に導かれて迷い込んだ部外者。でも、一気に谷口ワールドに惹き付けられた。
還暦を過ぎた人間だからこそ描ける、ゆとりを感じさせつつ哲学的な作品。「まだまだこれから」「今からが楽しみ」と作家を知る人は皆思い、その喪失に言葉を失っている様子がヒシヒシと伝わってきた。

コロナ、20年前の9・11、10年前の3・11、そして幾多の災害や事故。
朝いつもと変わらず元気に出掛けていったのに帰らぬ人になってしまうことがあるという衝撃。
過度に怖れることはないと思うが、私たちは、今という瞬間を大切に生きるしかない。谷口氏の作品のように、最後まで進化しつづけ、輝きを放ち続けられるように、全身全霊で生きる努力を怠ってはならない。
ーー私にとっては、同じく63でこの世を去った夫もまた、人生を最期のときまで生き抜くすべを家族に示してくれた人だと思っている。