一昨日、エリザベス女王の国葬が厳かに執り行われた。かつて世界に君臨した歴史をもつ大英帝国の、それもご在位期間が70年にわたる君主であられただけに、世界の多くの国と人々にとって喪失感は大きい。
今回、久々に「英連邦」という言葉を頻繁に耳にする。かつてイギリスが宗主国であった国々はその後独立しつつも英連邦に帰属している国が多い。
この言葉の響きが懐かしい。というのは、親の仕事の関係でロンドンで生まれ、一歳半で帰国したのだが、父は帰国後、外務省の英連邦課に勤務したと認識している。幼児なりに言葉がある程度わかるようになった幼稚園時代、「エーレンポー(カ)のおしごと」というセリフを家の中でしばしば聞いていたからだ。まるで漫画のキャラクターか花の名前(キンポーゲ、キンレンカ?)のようなお仕事をしていると思ったものだ。かなり後になって、漢字表記を知った時は「そうだったんだ!」と苦笑してしまった。
幼児期、父は「エーレンポーカのおしごと」で時折、海外出張した。そして、出張先から家族に絵葉書を送ってくれた。カラーテレビもない時代、異国の絵葉書はおとぎ話の国の景色のように見えた。そして、思い出すのがそこに貼られた切手。多くの切手の隅に、女王様の横顔が小さめに描かれていた(冠をかぶっているから、幼児でも女王様とわかる)。あるいは、切手自体が女王様の肖像画。子ども心には「なんでどれもこれも同じなの。切手一面が素敵な絵で、お顔はない方がいいのに」と思えた。その肖像こそ、書くまでもないが、エリザベス女王でいらしたわけだ。
この度の国葬とそのご生涯の報道に接して、こうした幼児期の思い出が懐かしくよみがえってきた。私が生まれたときには、既にご即位されていて、その後今日まで英連邦の君主としてご在位されてこられたことに、改めて畏敬の念を感じずにはいられない。すでに21世紀が20年以上経っているのだが、女王の死去とともに20世紀が遂に幕を閉じてしまったような寂しさを感じている。
[断捨離で古いものはかなり処分したが、切手帳を一冊だけ残してあるのを思い出した。
上の写真は、香港、マルタ、そして英国(お城シリーズという切手らしい)、下は全て英国]