ツアー旅行で奥大井川に行ってきた。新聞広告でこのツアーをみつけたとき、心が大きく動くと同時に、こんなに立て続けに旅行という贅沢をしていいものか?と躊躇し悩んだ。しかし、大塚国際美術館とジャンルは全く違うものの、どちらも私が行ってみたいと願っていた国内のトップ5に入る場所。その奥大井湖上駅にアプト式の列車に乗って行くツアーと知り、乗り鉄のスイッチが入った(笑)。それに料理教室をはずした日程、さらに私の誕生日の日ではないか!「これを逃したら次はないかもしれない」と思い、申し込むことにした。結果、大正解!
本命の朝、宿から大井川鐵道の千頭駅という小さな駅までバスに送ってもらい、昭和を感じる列車に乗り込んだ。山奥まで道路が整備される前は、この列車が川沿いに住む人々の足であったという。大人だけではなく、子どもたちの通学の足でもあった。しかし車社会になった今、平日だったこともあってか乗客は私たち以外は驚くほど少なかった。観光客の私にはゆったり乗れてありがたいが、国鉄の多くのローカル線が廃線になる運命を思い、車窓からの景色を眺めながら心が痛んだ。
途中駅でアプト式ディーゼル列車2台が連結されるのをしっかり見学し、列車に揺られること1時間余り。静岡駅近くの高速道路から見えた広い河原の大井川はこのあたりではすっかり狭まって両側の谷が迫り、木々も緑一色だったのが色づいたものがちらほらし始めていた。
遂に奥大井湖上駅に到着。私たち団体は下車。大きく蛇行する湖(川?)の突起した陸地部分に駅はある。駅を挟み両側とも湖なのだ。スイスに住んでいた時も様々な地形を走る列車に乗ったが、初めて体験する駅だった。
私たちを乗せた列車が次の駅へと去っていった線路の脇を対岸の陸地まで歩いて渡った。なんともいえない解放感と達成感。
そのあと130段ほどの急な階段を登った。少し進んで樹々が途切れたところから見下ろすと、ポスターなどでよく見る景色が眼下に広がっていた。「ここからだった(撮った)のね!」と感動とともに納得した。晴れた日に来れて、この唯一無二の空間と自然の中に身を置くことができた幸せをかみしめた。