奥大井川への旅で、鉄道好きの私には「発見」があった。
大井川鐵道に乗った際に撮ったディーゼル車の写真を見て、スイスとのつながりに気づいたのだ。年期が入ったディーゼル機関車の側面に「Brienz」の文字が小さく書かれていた。普通は目に留まらないと思う。しかしスイスに住んでいたお陰で地名とわかり「なぜだろう?」と。検索すると、大井川鐵道とブリエンツ・ロートホルン鉄道とは姉妹鉄道関係であることがわかった。
アプト式に頼る必要があった大井川鐵道が、山岳鉄道の歴史と技術を誇るスイスの、その中でもアプト式+蒸気機関車を使って走るこの鉄道会社に教えを請うたのは当然といえるだろう。
ブリエンツ・ロートホルン鉄道に乗ったときの光景がまぶたによみがえる。緑の可愛い蒸気機関車はブリエンツ町を出発しゆっくりと山を登る。山頂に着くと眼下にはスイスで水の色が一番きれいと言われるブリエンツ湖と、その彼方に連なるアイガー、ユングフラウの嶺々…。
大井川鐵道の「Brienz 」と命名されたこのディーゼル機関車は日本製らしい。日本生まれのブリエンツ君は、40年以上にわたって茶畑や長島ダムの横を、沿線の人々や私たち観光客を乗せて走り続けてくれているのだ。急に親しみが沸き、なんだか嬉しくなった。