60からのしあわせさがし ~bistrotkenwoodの日記

料理教室、学習障害、写真整理、外国との縁など徒然に

味で勝負ーー緑レンズ豆のサラダーー

11月のサイドメニューで予想以上にウケた料理があった。緑レンズ豆と牛脛肉のサラダというもの。よく言えば大豆の五目煮のフランス版なのだが、見た目は比べものにならないほど地味で冴えない、笑。それなのに時短の時代に対抗するほど時間と手間と(日本では)材料費がかかる料理なのだ。

塊の牛脛肉を香り野菜類とともに柔らかくなるまで茹でて汁の中で冷ます→人参やセロリを5mm角にカットしてアルデンテに火を通す→レンズ豆を茹でる→ドレッシングであえて味を含ませる

ーーざっと書いても4オペ、実際には6オペくらいある。それなのにその苦労が「全然見えない」謙虚な姿。しかし奥深い味の作り置き料理。

ところが「これ、作ります!」と宣言された方が複数いたし、既に作レポまで届いている!

これぞ味で勝負の家庭のごちそう料理なのだと改めて思った。

ちなみに今回使ったル・ピュイ産の緑レンズ豆がフランスでは銘柄品だ。ちょうど「丹波の黒豆」のような存在。そして面白いのは黒豆と真逆で、粒が一番小さいのがル・ピュイ産だ。山椒は小粒で…ならぬ、豆は小粒でも旨味がギュッとつまっている。

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スイスのチーズフォンデュ

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スイスにどっぷり浸かった11月も残すところ3日となってしまった。

カレンダーの曜日の並びによって4日間で3回開催となった料理教室もなんとか乗り越えられた。11月のハイライトは3種類のスイス産チーズを使った本格的なチーズフォンデュ。皆さんに本場の味を喜んでいただけてうれしかった。

スイスに住んでいた時に一目惚れして買った大きなフォンデュ鍋とそれをのせる専用コンロが久しぶりに登場した。ウルスリの鈴のイラストが描かれ、コンロの方はスイスの牧歌的な透かし模様が入っている。

実は塊のチーズをおろすところから作ったのは初めてだった。それも1回につき800〜900gのチーズ!自分でもおろしながらそのボリュームにびっくり。

スイスでのフォンデュの思い出といえば、冬にBettmeralpという日本ではあまり知られていないスキー場の宿で出してくれたフォンデュ。絶品だった。あまりのおいしさに「どんなチーズを使っているのですか?」と尋ねた。宿の主人はほほえみながら「うちの村のチーズですが、種類は秘密です」と。スイスでは一般的に3種類のチーズをブレンドして作るというが、家々、お店ごとに独自のブレンドがあり秘伝なのだ。地方によって作られるチーズが異なるから味も自ずと変わる。日本各地のお味噌とそれで作られる味噌汁、合わせ味噌の味の違いような感じだ。どちらも発酵食品だし、奥が深い。

日本では、グリュイエールとエメンタールの2種で作るのが一般的だが、私は香りに深みがある良質なラクレットを3種目にプラスした。結果、自分でも「久しぶりにホンモノのスイスの味だ!」と舌でスイスを懐かしく思い出すことができた。さて、その3種の配合は…、ヒミツ!笑

映画「パリタクシー」

今日はスイスのお隣の国に飛ぶ。珍しく1週間に2本の映画を見た。

先週の日曜日には娘と「国宝」、そして昨日土曜日の夕方に「パリタクシー」を気に入っている吉祥寺の小さなシアターで。

「国宝」については感動の言葉が書き尽くされているので省略。オーディブルで著書も聴いていたし、評判と期待を裏切らない素晴らしい映画を堪能した。願わくは、今年の流行語大賞に選ばれてほしい。

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「パリタクシー」は、2022年のフランス映画。今月、その映画のリメイク版「東京タクシー」(木村拓哉と賠償千恵子主演、山田洋次監督)が封切りされるのに先立っての再上映。92歳の身寄りのない老婦人が老人ホームに入居する日に、タクシーに乗ってパリの思い出の地を巡リ、中年のドライバーに語りかけながら人生を振り返る。壮絶な過去が明かされつつ、次第に二人の心は通い合っていく。実に味わい深い映画だった。

夏前に観た仏映画「秋が来るとき」もフランスの老年女優の演技とストーリーに引き込まれたが、今回のキャストとストーリーにも心打たれ、最後には涙した。92歳の老婦人を演じた女優はなんと実年齢94歳だという!拍手喝采したい。相方の運転手役の演技も光っていた。

「秋が来るとき」は、フランスの田舎町が舞台だったのに対して、こちらはパリ。タクシーでホームに向かう日でもきちんとお化粧をして、さりげなくアクセサリーまでつけているパリのマダム。異なる美しさだが、それぞれの主人公が重ねてきた人生が顔や立ち振舞に映し出されていてその齢の厚みに魅了される。

昨日の映画を見ながら、老婦人の顔がこの夏に93歳で亡くなった母と重なった。同じ時代を生きてきた人間に通じるところがあるのだろう。ウェストがきゅっとしまったドレスとハイヒールが若かりし日の日常だった世代。母もホームに入るまでは近くの医者に行く時もきちんとお化粧をしてネックレスと指輪をつけていた。(ホームでは「アクセサリーはお持ち帰りください」と返されてしまった…)

老若男女問わずスニーカーやジーンズがかなりのシーンでまかり通る今の時代に高齢期に突入している私は、どのように人生の最終章を迎えていくのだろうか?と考えさせられた。

もちろん身なりは二の次、それよりも大事なのは、この二つの映画の主人公たちのように、いかに内面に磨きをかけ続けながら年老いていけるか?ーーこれからの大きな課題だ。

ブログ:「秋が来るとき」

https://bistrotkenwood.hatenablog.com/entry/2025/06/15/221420

 

 

 

『ウルスリのすず』

突然ですが『ウルスリのずず』という児童書をご存知でしょうか?

ウルスリのすず/ゼリーナ・ヘンツ, アロイス・カリジェ, 大塚 勇三|児童書 - 岩波書店

スイス国民ならばたぶん皆知っている絵本だ。児童書のノーベル賞と言われる国際アンデルセン賞の第一回授賞者となったアロイス・カリジェが絵を手掛けた本だ。ストーリーはゼリーナ・ヘンツが書いていて、二人はタッグを組んで数々の名作を生みだしている。日本でたとえれば『ぐりとぐら』の共著のような存在といえるかもしれない(兄弟関係ではないが)。

今月の教室のために食卓や部屋のしつらえを考え始めているが、スイスの国民的料理であるチーズフォンデュを作るので、手持ちのスイスグッズを動員している。その中心的テーマに据えているのが上記の本だ。

ネットで検索すると、この絵本の日本語版は2018年が初版と出ているが、それは改訂版が出された年にすぎない。数年で70歳になろうとしている私は、幼稚園の時に母に日本語で読んでもらっている。1960年代に既に岩波の子どもの本になっていたのだ。そして私よりも7歳年上の夫もまた、子ども時代にこの本や他のカリジェの本を読んでいる。

近年になって、日本を含める世界各国で、カリジェのすばらしい絵がページ一面に大きく描きだされた「絵本」になったが、60年代の本では、かなり長めの文章(ストーリー)に添えられた挿絵として配置されていた。小学生になっていた夫は自分で読んでいたのだろう。

いつの頃だったか覚えていないが、子ども時代に読んだ本について夫と話しているとき、ふたりともカリジェの挿絵が入った岩波の2冊の本を鮮明に覚えていることを知って驚いた。(7学年という年の差と男女差があると、子ども時代の共通の思い出はそれほど多くないものだ。)

そして図らずも2度もスイスに住む機会を得たおかげで、2010年には、ついに夫と二人でこの絵本の舞台となった山奥の小さな村を「ロケ地巡礼」が如く訪れることができた。それだけに、カリジェの絵が描かれた品をみつけると、少々値が張っても財布の紐がゆるんでしまうのだった、笑。

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[かつては『アルプスの少女』という題で、こちらも大好きな本だった]

 

次はスイス


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月が変わって11月。先月は最初から最後までモロッコ一色だった気がするが、今月は一転してスイスに染まる予定。

今月の料理教室でスイスフォンデュを実演して食べるからだ。「悲願かなって」というほどではないが、ようやく実施にこぎつけられてうれしい。20年の冬にお教えする予定が、コロナで封印されたまま今日に至ってしまった。

そもそもスイスは、80年代と2010年前後の2回、2年半ずつ暮らした国だ。それだけに思い出と思い入れが詰まっている。

今月はスイスについて徒然に書いていきたいと思っている。

モロッコのアルバム


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モロッコから戻ってすぐにスタートした料理教室のスキマ時間を使って作成したアルバムが先週末届いた。期待値はあまり高くなったが、思いのほかよいアルバムになった。

モロッコへ出発する前は「今回はお手頃価格のアプリを使って小さめのサイズでササッと作ろうかな」と消極的に考えていた。旅に携行するために買った砂などにも強いデジカメでよい写真が撮れずにいたのが理由だ。

しかし帰国後にデータと向き合ってみると、やはり高品質のMybookで作りたくなった。写真の良し悪し以前に、モロッコという国の風土や文化などの全てが新鮮で刺激的だったからだと思う。滞在していた7日間、毎日4時間前後のバス移動の旅だったが、行く先々で景色や雰囲気が変化していった。この多様性は、私が知るヨーロッパ、アメリカ、アジアでは経験したことがない。

一昨日会った親友に、届いたばかりのアルバムを見てもらった。写真好きの彼女は「最高傑作じゃない?!」と言ってくれる。いや、モロッコの新鮮さと多様な姿が彼女にそう言わせたのだと思う。記録に留めたいものが、バチカンともコッツウォルドとも違うから、写真のレイアウトなどが自ずと、ヨーロッパ編のアルバムたちと違うものになったからかもしれない。

改めてアルバムを手に取ってページをめくっているが、今回思い切って旅行に参加してよかったとしみじみと思っている。

 

モロッコの思い出の品

今回のモロッコ旅行の思い出の品で、タジン鍋と並んで気に入っているものがある。

世界遺産に指定されている城塞遺跡アイトべンハッドゥで入手した炙り出し絵だ。観光客目当ての品だと思うが、なかなかの優れものだ。

サフランを溶いた水、砂糖入りのミントティー、そしてインディゴ(藍)の水で描いた絵を火で炙る。砂糖がキャラメリゼして茶色くなり、柄が浮き出すという趣向。f:id:bistrotkenwood:20251028214926j:image

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↑炙る前の絵。ラクダ、ヤシの木、遺跡などがうっすらと描き込まれている。

炙り出しを見終わった仲間たちは遺跡の頂上を目指して登っていってしまったが、私は残って「今仕上がったばかりの絵を買っていいですか?」と尋ねた。するとベルベル文字で私の名前を書いて渡してくれた。80ディルハム、¥1360!ラクダに乗った2日後に、モロッコの思い出を集約したような絵が手に入ってとてもうれしかった。

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[マイ・モロッココーナー:手前の瓶の中はサハラ砂漠の砂。ちなみに額は、帰国後にネット購入した安価なもの]