17日の日曜日がキリスト教世界の復活祭だった。バチカンのフランシスコ教皇が例年にも増して痛切に平和を呼びかけた姿と声は記憶に新しい。
復活祭といえば、3月の料理教室では、一足早くイースター(復活祭)をテーマにしたランチ会を開催した。卵が復活祭のシンボルの一つであるので、テーブルアレンジにもメニューにも卵を使い、またテーブルクロスはレモンイエロー、デザートはレモンパイと黄色を散りばめた。
そうしたEaster eggについて、11年前にスイスのベルンに住んでいた時に書いたブログがあるので紹介することにする。補足説明となるが、当時、フランス語会話のサークルに参加していて、場所はメンバーの自宅を持ちまわり。偶然、当日は私の家での開催だっただけに更に思い出深い。
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2011年4月21日
ブログタイトル「Easter Egg 談義」
先生役のNatalieがEaster Eggに関する興味深い記事を持ってきてくれました。今年のイースターは非常に遅く、今度の週末です。暖かい春の陽射しが射しこむ部屋で、皆でテーブルを囲んでles Oeufs de Paques(イースターエッグ)談義に花が咲きました。フランス、デンマーク、ポーランド、ルーマニア、スロベニア、スイス、そしてイラン…。復活祭の卵ひとつとってもキリスト教社会とひとくくりにできない多様性を知りました。
【新聞記事の概略から】
○新しい命・再生のシンボルとして、卵を装飾したりするしきたりはキリスト教以前の原始宗教にさかのぼる。
○careme(キリスト教の四旬節、復活祭の前40日間の断食の期間)の間は肉のみならず卵も食することが禁じられているので、復活祭の時の卵はご馳走。
○中世の頃より装飾した卵が(ロシア正教、ギリシア正教、西欧カトリック教など)キリスト教と結びついて様々なしきたりを生み出す。
○フランスの宮廷やロシア皇帝などが発注した贅を尽くした卵は有名である。
○卵にチョコレートを流し入れたチョコレートの卵が誕生したのは18世紀のフランスが初めて。
○この時期に茹で卵をぶつけ合って勝ち負けを競い合う遊びもイギリス、東欧各地に残っている。
――などなど。この記事を読んだみんなは、自分の出身国の復活祭にまつわるしきたりを披露し合い、ひとしきり盛り上がりました。
○イースターを象徴する色:黄色。スロベニアでは赤はキリストの血の象徴。
○イースターのシンボル: ヒツジ、時にはウサギ。ウサギが卵を持ってきて庭に隠す(ドイツ)。
○各家庭で手描きの美しい装飾を卵に施す伝統がある。(ポーランドほか東欧諸国)
○長方形のケーキに仔羊の模様を描いたケーキを作って祝う。(ポーランド)
○クリスマスツリーのように卵を木につるして飾る(主にドイツ語圏)
○各家庭の主婦たちは復活祭の日に、豪華なご馳走を美しく盛り合わせた籠を、神父様からの祝福を受けるために教会に持ち寄る。祝福を受けたご馳走を持ちかえって復活祭の食事を祝う。豪華な籠が祭壇前にずらりと並べられたさまは圧巻。主婦たちが豪華さを競い合う場と化している。(ポーランド)
○イランでは、数千年の昔から春祭りの際に装飾した卵を用意するしきたりがある。
○Lis de Paques(easter lily):白いてっぽうユリがイースター・聖母マリアの象徴。
――アジアの国出身のわたしは、初耳の話も数多く、ヨーロッパの中心に住んでいることもあって臨場感も加わり、とても興味深く感じられました。夫が一昔前にルーマニアに出張した際に持ち帰った美しい装飾のイースターエッグが記憶によみがえり、今になって初めて、なるほど東ヨーロッパの習慣だったのだと納得しました。
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2022年4月に戻るが、ウクライナの主要な宗教は東方キリスト教。先日の日曜日は、本来ならば、日本人にとってのお正月のように、大切なお祝いの日だった筈だ。マウリポリの製鉄所の地下空間に1000人以上の市民が長期間にわたって避難生活を強いられていると報道されているように、まだ多くの人々が国内で緊迫した避難生活を送っている。春の光りの中で喜び祝っていた昨年までの復活祭を思い出すだろうに、一体どんな思いでこの日を迎えたかと想像するとほんとうに心が痛む。