60からのしあわせさがし ~bistrotkenwoodの日記

徒然日記、料理教室、学習障害、お一人様、外国との縁

プロヴァンス地方のラベンダー

かつてスイス・フランスに住んでいたころに書いていたブログに、ラベンダーを取りあげたものがある。2012年夏に、夫の出張に同行して訪れたプロヴァンス地方から戻ってすぐに書いているだけに、「思い出」よりも具体的で臨場感があるので、引用したいと思う。しかしその前に、出張目的について少しだけ注釈を。

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1.ITER(国際核融合実験炉)訪問:ITERの木島滋ITER機構長(当時)を表敬訪問、建設中の施設視察と木島邸での夕食会

2.ヴァロリス国際陶芸ビエンナーレの開会式と関係者との昼食会(東日本大震災一周年につき、日本の陶芸家の作品が招待出品された特別展だった。)

3.エクサンプロヴァンスにおける経済フォーラムへの出席 

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[2012年7月のブログより]

今回の旅を通じて私の心の中のキーワードの一つは「ラベンダー」。

 ○ITERの建設予定地の暑く荒涼とした土地に群生する乾き気味のラベンダー。南仏では雑草のようにたくましく繁殖する植物であることを初めて知りました。

○本島機構長のお宅のベランダ横の地面にたっぷりと咲いていた紫の美しいラベンダー。夕方の風と共にこの花のやさしく素朴な香りが辺り一面に心地よく漂い、訪れた私たちを迎えてくれました。

 ○VallaurisのCohen夫妻の豪邸の庭の育ちのよいラベンダー。ラベンダーが豪邸の庭のアクセントになるほど存在感があるとは思ってもいませんでした。

 ○3日目の朝、思わず目に留まって買ってしまったラベンダー畑の水彩画。早めにホテルを出て美術館へ向かう途中で、ミラボー通りの雑貨のマルシェでみつけたものです。その絵の前で思わず足が止まってしまいました。
それというのも、本島邸での食事の会話の中で「この週末がちょうどラベンダー畑のみごろ、来週になるともう全部刈り取られてしまう」と伺っていたからかもしれません。見渡す限り紫色に広がるラベンダー畑はそれはそれは美しいそうです。
スイスで見た可憐で白い野生のナルシス(水仙)が丘一面に咲く光景、フランスの春の菜の花畑の黄色の絨毯などが脳裏に浮かび、ラベンダー一色の光景を想像するだけで夢見心地になりました。人間の都合で刈り取られてしまう運命にあるところはどの花にも共通しています。見に行きたいけれど叶わぬ願い…。そのようなお話を伺っていただけに、ぼかし紫だけで描き出された風景に、まだ見ぬ姿を夢想し惹かれたのだとおもいます。
――ラベンダーについてのお話で興味深かったのは、同じ畑での連作ができない植物なので、今年見てきれいだと思った場所に翌年いっても咲いていないということ。まさに地元の情報を元に出かけなくては出会うことができないお花畑なのですね。
ラベンダー畑の絵を買い、夫たちと食事をした後、もう一度ミラボー通りの露店の前を通ったら、朝には出ていなかったラベンダー専門の店がありました。刈ったばかりのラベンダーの花束からはむせかえるほどの香りが通りに漂っていました。夫の仕事関係の方たちと揃って歩いていただけに立ち止まることもできず、胸一杯にその香りを吸い込んでプロヴァンスに別れを告げました。
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ブログ日記を読み返すと、はるか昔の出来事なのに、思い出が五感によみがえってくる。それと同時に、自分が書いたのに「へぇ~、そうなんだ」と新たな発見に感じられたり(ただ歳を取ったってことかもしれませんが (^^;  )……懐かしく、愛おしく、そして楽しい。

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 [エクサンプロヴァンスのマルシェで求めた絵は、今では私の寝室の一番目に留まる壁に掛けてある]