もし今年、世界的なコロナ感染拡大が起きなかったら、8月6日には、東京においてはオリンピックが開催中であったし、広島では世界的ピアニスト、マルタ・アルゲリッチが演奏しているはずだった。それも、Akiko's Pianoで。
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8/13のブログで被爆少女のピアノについて書いた。その後、NHKが15日夕に「Akiko's Piano ~被爆したピアノが奏でる和音(おと)」を放映した。ようやく今日になって録画しておいた番組を見ることができた。明子さんの人生を再現したドラマの部分と、ピアノの発掘から2020年8月6日現在までを追ったドキュメンタリーから構成されていた。前回のブログで紹介した冊子に沿った内容だった。
処分寸前だったピアノをなんとしても再生・保存しなくてはならないと確信した被爆三世の調律師、戦後に明子さんの両親と親交が深くピアノの存在の発信に尽力した女性、2015年に明子さんピアノを試奏したアルゲリッチ、「Akiko's Piano」という曲名のピアノ協奏曲を作曲した藤倉大氏、その曲を本年8月5日に初演したピアニスト・萩原麻未と広島交響楽団の演奏が次々と紹介された。そして、ドラマで明子を演じた芳根京子が広島で明子の足跡をたどる姿とナレーション。
アルゲリッチがピアノを試奏した際のコメントが特に印象深かった。「このピアノはなぜかショパンを弾くとき特に美しく響く。弾き手Akikoがショパンが大すきだった記憶が刻み込まれているのかもしれないわね」と語り、優しく微笑んだ。
そしてその後、終戦から75周年という節目の今年の8月6日の前夜、世界初演となる藤倉大のピアノ協奏曲第4番「Akiko's Piano」を演奏することを、彼女は承諾していた。それも驚くべきことに、既に予定に組まれていたヨーロッパでの音楽祭出演を断ってまでも引き受けてくれたのだと冊子には書かれていた。
コロナのために来日を断念せざるを得なくなってしまったとき、2015年に同女史が、明子のピアノに触れた場に同席し、面識があった広島出身で被爆三世の萩原麻未に、そのタスキがつながれたという。
更に、来日できなくなった彼女は下記のサイトの中で、広島市民と日本国民に当てて心のこもったメッセージを動画で寄せている。
Akiko's piano | 明子さんの被爆ピアノ | HOPEプロジェクト
明子のピアノに寄り添う、心温まる言葉に満ちていて感激した。
明子さんのピアノは、名実ともにMusic for Peaceを語り継ぐ道具に昇華しているのだ。