仏・ルピュイ町の伝統的な手工芸品であるボビンレースについて二日に亘って書いたが、ルピュイの地名でフランス人が連想するものがあと二つある。緑のレンズ豆と大聖堂だ。
花より団子のようだが、食の方から簡単に説明すると、フランス人にとって、レンズ豆と言えばルピュイ産だ。日本で見かける褐色のものとは違う。一回り小さく緑がかっている(写真の箱の窓の中が実物だ)。しかし、食感も旨みも、大粒の親戚よりも味わい深い。日本で「丹波の黒豆」というように「ルピュイの(緑の)レンズ豆」と必ず記される。
ーー以前ブログで取り上げたので参考まで。
「スローフード」
https://bistrotkenwood.hatenablog.com/entry/2020/04/28/173611
もう一つの町の象徴はカテドラル。パリのノートルダム大聖堂などの華麗なゴシック様式よりも年代が古いロマネスク様式。東方のビザンチン様式の影響も見られる大聖堂で、ユネスコの世界遺産にも登録されている。
中世以来、ヨーロッパ・キリスト世界の人々にとって、聖地と言えば、サンティアゴ・デ・コンポステラ(現在のスペイン国内)。信者たちはコンポステラを目指して巡礼の旅に出た。
ルピュイの大聖堂は、フランスのキリスト教徒にとっては巡礼の旅の出発点の一つ、あるいはまた、更に遠くから来る人々には、大事な巡礼ポイントの一つだった。
[34年前に訪れた際の写真。家族のフォトフレームに夫が選んで納めてあった]
ちなみにレンズ豆の箱の(まるでモンサンミシェルのような)小さい絵は、すぐ近くの岩山に建つサン・ミシェル・デギュイ礼拝堂。巡礼者たちは、視界の彼方にこの礼拝堂を見つけると、ルピュイ大聖堂が近いことを知り、長旅の疲れを忘れ、はやる気持ちで足早にルピュイを目指したことだろう。
いずれにしても、ルピュイ(正式名は、ル・ピュイ・アン・ヴレ le Puy en Velay)は、フランス国土のおヘソの少し下あたりに位置するので、巡礼の道としても、交易路としても、人々が東西南北から集まる要衝の地だった。
最後に、ルピュイのレース工芸に戻るが、一説には、レースで有名なイタリアのヴェネチアからその技術がもたらされたと言われているのもそのためだ。