60からのしあわせさがし ~bistrotkenwoodの日記

徒然日記、料理教室、学習障害、お一人様、外国との縁

イギリスへの旅:その② オックスフォード

2つ目の旅のハイライトはオックスフォード。旅行プランをみたとき、いや、出発するまでは、正直なところ特に思い入れはなかった。学生時代のヨーロッパ周遊旅行中、自由行動の日にこの町を友人と訪れたが印象が薄かったのだ。(いま振り返れば、カレッジが町中に点在していて、学生の自分が想像していた「広いキャンパスの中の大学」とは全く異なる形態だったからだろう。)

今回、オックスフォードという町に感銘を受けたのは、ひとえに下の本⤵️を往路の機中で読んだおかげだ。

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今上天皇が皇太子時代にオックスフォードへ留学された数年後に御執筆された原稿を当時、学習院が出版している。それが今春、大手出版社が一般向けに書籍化した。

畏れ多くてコメントはあまりできないが、若き日の陛下の留学体験のご様子が、陛下のお人柄そのままのまっすぐな文章で綴られている。渡英当初の日々、在籍されたマートンカレッジの日々の生活と学業のご様子、ご研究テーマについて、オックスフォードの町と近郊の様子などなど。そして、将来の天皇になられる方のご留学とあって、一般人では知ることができない、英国の著名な方々との交流などの貴重な体験についても綴られている。とにかくすばらしい内容なのだ。14時間以上かかるヨーロッパ路線の長旅が、短く感じられたほど満足度が高い時間となり、これから訪れるイギリスへの思いが一気にふくらんだ。

そして4日目に訪れたオックスフォード。ベテラン添乗員の知識豊かな案内とともに街の中を歩くと、陛下の描写と重なり、街の様子が一層生き生きと感じられた。いよいよマートンカレッジ。同カレッジだけでもかなりの広さがあり、その外観に重厚な歴史が感じられる。一般の人は構内に入れないが、御本に綴じ込まれていた構内の地図と陛下の記述で、そこで繰り広げられる学生たちの日常が脳裏に浮かび、門の前に立つだけで臨場感に浸ることができた。

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またマートンカレッジの裏手の塀の外に広がる広い芝生のグラウンドは、これぞイギリスという趣がある。将来のオックスフォード大学生を目指す名門私立校の男子生徒たちが遠くで走っているのがみえたが、何ともいえないゆったりとした雰囲気が印象的だった。「生成AI」が教育現場で深刻な問題になっている21世紀の今、こんな世界がまだあるのだと驚きすら感じた。

皇后雅子さまが外務省員としてご留学されたカレッジもまた優美で格調高い姿の外観だった。令和の天皇皇后両陛下ゆかりのオックスフォードを、不敬な書き方をお許しいただければ、陛下の「道案内」とともに巡ることができ、本当に印象深いものとなった。