60からのしあわせさがし ~bistrotkenwoodの日記

徒然日記、料理教室、学習障害、お一人様、外国との縁

イギリスへの旅:その① ウェールズ

イギリス旅行から帰国し、10日以上経ってしまった。実は、帰国直後に娘がコロナ陽性と判明し、その時点では陰性だった私も、二日後に陽性と出てしまった。喉の痛み、発熱、体中の痛みと倦怠感などの症状で、娘の方が重かったが、それでも二人とも軽症の部類だろう。ようやくおとといあたりから体力と気力が普段に戻った。5/31に6回目のワクチン接種をしていたのだが、罹るときはかかるのだ。マスク人口ゼロで制約が一切なく、それなりの人混みが随所にある海外旅行だと不可抗力といえるのかもしれない。

さて、とんだオチがついてしまったが、たくさんの思い出が詰まったよい旅となった。湖水地方から始まり最後はロンドンまで。見どころ満載の7泊8日のいわゆるツアー旅行だ。私の旅のハイライト・ベスト3を(時系列で)挙げるとしたら、①ウェールズ国(地方)訪問、②オックスフォード訪問、③息子家族との再会。番外編は「羊たち」。高速道路の両側にどこまでも続く田園風景と、その中でゆったりと草を食む羊たちの群れ。

出発前は、かつてワーズワースの詩が好きだったので彼が愛して詠った湖水地方を楽しみにしていたのだが、予想に反してランクアウトした。スイスの様々な湖の表情を2年以上堪能したからかもしれない。いずれにしても、上記のテーマで複数回に分けて書こうと思う。

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ウェールズが気に入った理由は、自問してもはっきりと答えられない。素朴さ、地味さ、アウェイ感のようなものが、私の心には味わい深く響いた。アウェイ感…、そう、何といっても別の言語があることだ。公用語が4か国語あるスイスに住んので、街中の道路名が二か国語で表記された町や、限定的な地域ではロマンシュ語という古典的な言語が使われているのをみてきた。ウェールズは後者に類似しているが、規模が違う。

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そもそもウェールズは英国の中の4つの「国」のうちの一つだ(他の三つはスコットランド、北アイルランド、イングランド)。4つの国??と思うかもしれないが、2019年のラグビーワールドカップの時「イギリス代表」の1チームではなく、それぞれの国名のチームが出場し、強豪チームとして決勝ラウンドに進出したのは記憶に新しいと思う。サッカーW杯やオリンピックはイギリス代表なのだが、やはりラグビー発祥の地では、これらの「国」の対抗戦の歴史が長いのだろう。

話が若干それたが、4か国の中で唯一独自の言語を持ち、それを21世紀もなお公的に保持し続けているウェールズに感銘を受けた。街中の駐車場の表記もウェールス語が一番目に記されている。スーパーの壁沿いにはウェールズ語だけ(きっと「冷凍食品、生鮮野菜、肉類」などと記されているのだろう)。言語が違えば自ずと「国民意識」とプライドも高まることだろう。とても興味深くおもしろかった。

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もちろん、訪れたコンウィ城という城の廃墟も、スランディドノという海岸リゾートもよかった。後者のリゾートの町では、歴史ある豪華なリゾートホテルをはじめとする美しいホテルが海岸線に沿って連なる。さらに、道路を挟んで海辺には、幅の広い遊歩道が延びている。(車の中からしか眺めたことがないのだが)南仏のニースの海岸沿いの遊歩道によく似ている。いや、そもそもニースの遊歩道は「プロムナード・デ・ザングレ(Promnade des Anglais)=イギリス人の遊歩道」とよばれているではないか!イギリスの地方訪問は今回が初めてなので無知なのだが、きっとどの海岸リゾートにも遊歩道があるにちがいない。かつての上流階級の人々は夏になると、海岸リゾートに逗留して遊歩道をサマードレスを纏いパラソルをさして優雅に散歩したことだろうと夢想する。19世紀の英国女流文学で描かれているように。

フランスに住んでいたとき、ニースの遊歩道を車窓からみた夫は「なぜかわからないけど『イギリス人の~』って名前がついているんだよ」と言っていた。私も当時は不思議に思った。百年戦争に象徴されるように、イギリスとフランスは敵対しあう関係が続いた間柄なのだから。地中海からず~っと北にワープし、ロンドンからも遠距離の北の海辺に立ち、はじめて理由が分かった気がした。

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