まるで今日の大型台風のような息子家族の一ヶ月余りの滞在だったが、その台風一過から早くも2週間経とうとしている。昨日スーパーに行く前に、洗濯場の隅にためていた牛乳パックや食品トレーを取りに行ったが、一瞬手が止まった。豚シャブ肉用と大きなシシャモ用のトレー。嫁のHさんが好きな我が家流豚シャブの常備食と、J君が大好きな焼きシシャモ。二人がおいしそうに食べてくれた笑顔が瞼に浮かぶ。薄味の付いた豚シャブは、Hさんがつわりだった時にも喉を通った数少ないおかずで、今回もリクエストで何度作ったことか(こんなものでいいの?お安い御用)。シシャモは太いほど卵がいっぱいと幸せそうに頬張るJ君。どちらも庶民のおかず、しかしロンドンでは「夢のまた夢」という。私も海外経験が多いが、スーパーで薄切り肉が売られていない世界なのだ。まして極薄切りのしゃぶ肉はたしかに夢的存在。
月並みな扇型のトレーと波型の筋の入った黒いトレーをじーっと眺め、HさんとJくんと赤ん坊のS君と過ごした日々に思いを馳せる。(しゃぶ肉も細かく切って離乳食のおかゆに混ぜたっけ…)この暑い洗濯場で毎日汗だくになってみんなの洗濯物を干したことまでが、いま振り返ればよい思い出。
――独り生活に戻って以来いちばんといえるような寂寥感に襲われている自分に驚く。同時に、たちすくんでいる自らの姿にクスッと笑ってしまった。
(ちなみに、トレーたちは写真に記録されることなくリサイクルボックスへと消えていった、笑)