ヤタガラスといえば、思い出すことがある。
2010年5月末にスイスにヤタガラスが飛んできた…、
いや、岡田監督率いるサッカー日本代表がやってきた。
南アフリカで開幕する2010年サッカーワールドカップの直前合宿をスイスの山奥のサース・フェーという保養地でおこなうためだった。
南アフリカでの試合会場が高地ということで、標高1800mにあるサース・フェーが選ばれた。心肺機能の調整、そして高地でのボールの飛び方の研究など必要だったらしい。
サース・フェーは、マッターホルンで有名なツェルマットの隣の谷に位置する。世界的に有名なツェルマットと違い、山好き、スキー好きが集まる、渋いが通好みの場所。4000m級の連峰が、険しい頂と青白い氷河を光らせながら、町を見下ろしている。
日本代表が訪れた時は、完全なオフシーズン。町の中央の店はほとんど閉っていて、ひっそりと静まりかえっていた。それでも、町をあげて日本代表を歓迎してくれた。
唯一の大きなフィールドを、日本代表合宿のために、人工芝から自然芝に張りかえるほどの意気の入れようで迎えてくれたのだった。
練習が始まると、フィールドの観覧席中央には、多くの人の応援の思いが詰まった 千羽鶴ならぬ、「千羽ヤタガラス」が掲げられた。
神話の故郷に雰囲気が近い(?)といえなくもない深山幽谷で、選手たちは二週間合宿をしてワールドカップに備えたのだった。
そして、南アでは、今回のラグビー日本代表と同じように、素晴らしい戦績を残してくれた。その勝利には、サース・フェーも一躍買っていたと思うのである。