60からのしあわせさがし ~bistrotkenwoodの日記

徒然日記、料理教室、学習障害、お一人様、外国との縁

青パパイヤとソムタムの思い出

上記のタイトルで、14年前の6月の東京でブログを書いている。

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[前略] 青リンゴ、青葡萄・・・とくれば酸っぱい!というイメージかと思います。でも、青パパイヤは酸っぱくないのです。
ほのかな甘み、かすかな酸味、どちらかというと、そのさわやかな食感が命の果物(野菜? )です。
現地の人の切り方がまた面白いのです。
皮をむいたら、包丁で2-3ミリ幅に切り込みを縦に一周入れます。床に座り込んで金だらいを置き、あとはささがきゴボウを作る時のように包丁を手前から向こうへと平行に送りながら器用に「太いささがき」を作っていきます。切られたささがきは下の大きな金だらいの中へ。
ささがきゴボウと違うところは、まな板なし、すべてが空中で行われること。路地の屋台の片隅で包丁一つでつくっている光景をよく見たものです。
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さて、このサラダを作る時に活躍するのが写真の焼き物のすり鉢です。自家製のカレーペーストを作る時などは、石のすり鉢とすりこぎを使いますが、ソムタムのときはこの素焼きのすり鉢の登場です。
炒ったピーナッツを砕くところからはじまり、ニンニクやトウガラシをつぶして(激辛!)ドレッシングづくり、野菜や具を軽くつぶしながら合えるところまで一つのすり鉢で全部仕上げてしまうのです。
それもトン、トン、トンッという焼きものに木のすり棒が当たる小気味よいリズミカルな音をひびかせながら・・・・
ちょうど「おふくろが朝のみそ汁の具を切るまな板の音」といった風情。

実はこの音が、1歳から4歳までバンコクで育った娘にとってはまさに「原風景の音」、ソウルフードならぬ、soul sound (そんな単語あったかな?)なのです。
いまだに、私が下手な音を立ててソムタムを作っていると、もう社会人となった娘が、
「アー、懐かしい!ティウ (タイの時のお手伝いさんの名前)がいつも作ってたよね!」
と、まるでお手伝いさんの写真を見るかのようにすり鉢をいとおしそうに眺めます。
もしかしたらこの音が彼女にとって「おふくろの音」なのかもしれません、苦笑。
三つ子の魂、百まで・・・と実感するひと時です。

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今回はソムタムをパイレックスポールで手軽に作る方法を紹介する予定だった。だが、久しぶりにホコリをかぶったすり鉢を取り出して眺めると、遥か40年近く前のソムタム作りの音が、私の耳にもよみがえってくる。カラカラとピーナッツを叩く音が序曲。最終楽章は、フルオーケストラ。水気を含んだ重い音で終わる。