スーパーの支払い機の前で、僅かに足りない小銭のために、コートのポケットに手を入れたら、たくさんの小石が指に当たった。
ポケットの中は、先週の日曜日で時間が止まっていた。
その日、息子と孫が急に来ることになった。パパが子守りを担当する日。しかし、間近に迫った試験のために少し勉強したいので子守りを手伝ってほしいとのこと。
到着後しばらくは、彼らが持参した知育おもちゃで遊び、そのあと早めのお昼ご飯にした。おいしそうによく食べてくれるので助かる。
全員腹ごしらえした後、パパがしばらく勉強できるよう、孫と私は近くの神社に、お散歩を兼ねてお参りにいくことにした。
息子家族は、自宅近くの神社にすでに初詣に行き、二歳の孫もちゃんとお参りができたという。
手を振りほどかれない手のつなぎ方を息子から教えられ、孫の手をしっかり握って家を出る。
孫と二人での初めての外出だ。
責任重大で身も心も引き締まる。
幸いパーッと駆け出すタイプの男の子ではない。しかし、家からバス通りまでのわずかの道のりで、小さな道草を楽しんでいる。
舗装されていない路地でしゃがみこんで小石を"厳選”しては拾い、バァバにプレゼントしてくれる。小さい黄色い実を見つけて「きいろ!」と言って渡してくれる。
片手はつないでいるし、もう一方の手は空けておきたい。孫のプレゼントは次々とポケットに納まった。
一週間後。
小銭を選り抜く為に、ポケットの中身をひとにぎりで取り出し、手を開いた。
すべすべの小石10個ほどと、黄色い木の実にまぎれ混んで小銭が数枚。
レジの人の前でやらずに済んで助かった。
かつて読んだ絵本に、子ギツネがどんぐりや葉っぱで買い物をしようとした話があったが、人間のおばあさんでは笑い話にもならない。
手のひらを眺めて、思わず苦笑してしまった。