かなり前のブログで、書道教室でご一緒のAさんが、コロナで休講となった2ヶ月の間に、千字文を三書体で書き上げたこと、その出来映えに感銘を受けた先生が奔走されて、千字文大会にその作品を応募されたことについて書いた。
「千字文大会ーー95歳で三千字」(7/26)
https://bistrotkenwood.hatenablog.com/entry/2020/07/26/014041
夏の終わりに、Aさんの作品が、全臨の部で特選に選ばれ、特選のなかでも上の賞の候補となったという快挙の一報が先生のもとに届いた。その頃の私は、母の足の疾患で通院から手術へと取り込んでいたため、第一報の際の祝福の機会を逃してしまった。
しかし今日は、先生のもとに届いた表彰状を、先生からAさんに授与する場に立ち合うことができた。
駅ビルの中のカルチャーセンターの殺風景な教室だが、環境と形式はどうであれ、Aさんの成し遂げた偉業と、応募までの先生のご尽力ぶりは本当に素晴らしい。
なにしろ、師範の資格がある人でも応募できる大会だそうで、一年かけて仕上げた力作が、全国から多く寄せられるという。そうした中で、書道歴8年で、大会の存在すら知らずに、仏僧が写経するかの如く無心で書き上げたAさんの三千字なのだ。
Aさんの魂が宿った作品が、書道界の重鎮の心を動かしたのだろう。
「まさかこの歳になって、こんなに立派な賞をいただくとは」「すべてコロナの<お陰>ですよ」「コロナの間、家にいてやることがなかったからですよ」
と今日もAさんは、いつもと変わらず謙遜しながら言われた。
これほどまで、逆境を前向きに捉えて、生かすことができる人がどれほどいるだろうか?
「老いのお手本」として、たびたびAさんを紹介してきたが、今日も改めて、Aさんほどの老いのお手本、生き方のお手本といえる方には出会ったことがないと思った。