4日前に凶弾に倒れ亡くなられた安倍元総理の葬儀が執り行われた。柩は、増上寺を出て、自民党本部、官邸、国会の前をゆっくりと巡っていく様子がテレビに映しだされ、画面の前で、手を合わせ涙をぬぐいながら眺めた。
夜のニュースで昭恵夫人の言葉が紹介され心がうずいた。そして思わずパソコンを開きある原稿を探した。
2014年9月の夫の偲ぶ会の際、安倍総理より賜ったお別れの言葉。以下、その抜粋。(当時、ネットにも掲載された言葉なので、ここに転記させていただきます。)
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[略]享年六十三歳。今も平均寿命がどんどん延びている中においては、あまりにも短い。「もっともっと長生きしてもらいたかった」その思いは、今日この場に集まった人々すべての思いだろうと思います。
しかし同時に、Kさんは見事な人生を生き抜かれたとも思います。
私の郷里の吉田松陰先生の残した、処刑前に書き残した『留魂録』という本がありますが、この中にこういう一節があります。
「三十歳で死んでいく私のことを哀れと思うかもしれない。でも、十歳で死んでいく少年には、その十年の中に春夏秋冬が備わっていて、二十歳で死んでいく二十歳の青年には、その二十年の中に春、夏、秋、冬、四季がある。七十歳、八十歳で死んでいく老人には、その中におのずと四季がある。一概に、短い、長いとはいえない。要はその人生が花を咲かせ、実をつけたかどうかだ。もし、私の遺志を継いでいく人がいてくれたならば、私のまいた種はいつか育ち、収穫を迎えるだろう」と言い残しています。
[中略]あとは、Kさんがまいた種を私たちがしっかりと育て、そして収穫を迎えなければなりません。それこそが私たちの責務であると思います。
国民の命を守り、平和な暮らしを守り、日本の安全と平和を守っていくために、全力を尽くすことをK.I.さんの御霊の前でお誓いをし、そして、Kさんの全身全霊を込めたご貢献に日本政府を代表して感謝を申し上げ、[中略] Kさんのご冥福をお祈りをし、お別れの言葉といたします。
Kさん、ありがとうございました。
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ーー今、読み返し、言葉を失っている。霞が関の一公務員にすぎなかった夫が賜った過分なお言葉。国民のひとりとして、同じ言葉を何百倍にもしていま申し上げたい気持ちでいっぱいです。
昭恵夫人は葬儀で松陰のこの言葉を引用され、「主人も政治家としてやり残したことはたくさんあったと思うが、本人なりの春夏秋冬を過ごして、最後、冬を迎えた。種をいっぱいまいているので、それが芽吹くことでしょう」と述べられたという。
安倍総理の全身全霊を込めたご貢献に感謝申し上げますとともに、ご冥福を心よりお祈り申し上げます。
安倍総理、本当に本当にありがとうございました。