長崎にあるホスピスで活動されるシスター(石岡)ヒロ子氏の講演会に、友人に誘われて参加した。
余命わずかでホスピスに入院してきた患者さんとその家族に寄り添い、思いを受け止め、看取りを重ねてこられたシスターの言葉は深く、慈愛に溢れ、心を打つものだった。
若い娘さんを、就職したばかりの息子さんを看取った母親の悲しみについてのお話には涙が込み上げた。
ホスピスで入浴した90代のおばあさんの言葉、「ここは天国。“露天風呂”にも入った。あちらに行けば極楽」にはみなで笑った。
「どんな人も、人は(遅かれ早かれ)いつか必ず死ぬものなのです。自然なことなのです」
「二人に一人は癌になる時代なのです」
「(患者さんが)周りに迷惑をかけていることを申し訳ないと思わなくていいのです。私たちがお世話をする機会を与えていただいているのです」
小柄なシスターから発せられる信仰と信念に裏付けられた力強い言葉は、ただの慰めではなく、患者と家族を勇気づけるものばかりだった。
夫を自宅で一人で看取った者として、何度も心の中で大きな相づちを打った。
タイトルの本の著者・小川美樹さんがゲストとして招かれたが、シスターのホスピスでご自身のお母様を看取られたお話も素敵だった。お母様の希望に添って、ステンドグラスの光が射し込む教会で、薄紫色のドレスを来て旅立たれたという。ご本人も、送る者も、悲しみの中でも満たされた思いだったことが伝わってきた。
日本にはまだまだ欠けている、臨床スピリチュアルケア。
終末期を医療面で支えるだけではなく、終末期だからこそ、患者本人の心の声に耳を傾けて寄り添い、家族の辛い思いも受け止め、サポートを惜しまないことがいかに大切であるかを再認識した。
私たちがそれを実践するためのヒントが一杯つまった講演、まさにレッスン。
少しでも多くの人に聞いてもらいたい内容だと思った。