一昨日のブログで、
>>> (風花も六花も雪輪は)雪を表す言葉であっても、スイス・アルプス、いやそれ以前に、冬の日本アルプスの峰々を覆う雪にはそぐわない<<<
と書いた。
日本の雪山は映像でしか知らないので語ることはできないが、スイス・アルプスの雪は、あの峻厳な氷河の産みの親であるだけに、印象があまりにもちがう。
ベルンに住んだ2年半の間に、夏にも冬にも、スイス各地の多くの氷河を見る機会に恵まれた。それらについて素人が徒然に書くだけでも、一回のブログでは書ききれない。
ここではまず、風花や六花との対比となる冬の氷河に絞ることにする。
3000-4000m級の山々をスキーのリフトに乗りながら眺めていると、白黒のコントラスト(雪と岩)を成す山肌の間に、時折、ツルリと青光りした顔がのぞいていたり、ザクザクとした巨大な霜柱のような青白い氷の塊を見つけることがある。
氷河だ。
冬山で間近に見るとき、それは眺める者の骨まで凍らせるような、得も言えぬ冷たさを放っている。
氷河はかつて、山の麓に暮らす人々を苦しめてきた。そもそも20世紀初頭(?)までは、山々は、今よりも何倍もの氷河に覆われ、山の麓まで届いていたものもあったらしい。
土産物店の絵はがき売り場で、セピア色の古い写真を商品にしたものを見つけることがある。「こんな山里まで氷河が迫っていたんだ!」と驚かされたものだ。
今でこそ観光の目玉のひとつとなっているが、いにしえのスイスの人々にとって、氷河は歓迎されない存在だったのだ。
夏も解けてなくならないため、農作物も牧草も育てられない。害はあっても何らメリットのない冷凍庫の隣に否応なく住まわされているようなものだったのだろう。
それに対して、六花・雪輪の紋様は、ぼたん雪を造形化したものらしい。寒さが緩んだ時期に、里山や集落、あるいは町中に降るぼたん雪と、氷河を生む雪は、正反対に近い。
ーーそぐわないと感じるわけだ。
[三枚の写真ともに、サースフェのゲレンデにて。標高3000m以上地点なので、氷河は、目線より少し上に間近に迫って見える]