60からのしあわせさがし ~bistrotkenwoodの日記

徒然日記、料理教室、学習障害、お一人様、外国との縁

水銀式体温計

前回のブログで、古い水銀式の体温計に救われたことを書いた。
久しぶりに使ってみて、その”不便”さに、便利グッズと時短に慣れてしまっている自分に気づかされた。

水銀式の場合、取り出したらまず、目盛りが指している温度を確認しなくてはならない。36度以上のままになっていたら下げる必要があるからだ。
さすがに60代の私はすぐ読めたが、たぶん初めて水銀式体温計を手にした若い人だったら、即座には読めないだろうと思った。
ガラス棒を指先でコロコロと回転させて水銀の銀色がキラリと光り、目盛りと揃って見える角度を探す必要があるからだ。
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今回、チェックして見らた36℃を超えていたので、まずは水銀の位置を下げることから始まった。
ところが久しぶりだったので、無意識のうちに遠慮がちに振ったようで、なかなか下がらない。
「下げにくい体温計と、下がりやすい体温計があったな~。どうもこれは厄介な方だ」とおもった。
周りをみまわし、どこにもぶつからないことを確かめた上、ひじから下を大きく、手首のスナップを効かせながら力強く振り、何度目かに下げることができた。
ようやく体温を計れる準備ができたので、脇の下にしっかりと挟んだ。
すると、幼かった頃の思い出が蘇ってきた。耳の奥から、かつて小さかった頃に聞いた母親の厳しい声が響いてくる。
「しっかりギュッとはさみ、絶対に動かないように。ガラスでできているから、割れたら体に刺さってとっても危ないからね!」
体温計はとっても怖いものと洗脳されていた。計っている間じゅう、体を硬直させていたと思う。
子どもにとって10分もの間、その状態で待つことのなんと長かったことか。熱があって具合が悪い時でも容赦ない。
「もういいわ、出してみてちょうだい」といわれた時の解放感…。

今回、一連の「作法」を終えてようやく体温を計り終えたとき、昔は当然のように思っていた体温測定が、なんと手間ひまかかるものだったのかとおもった。同時に、最初に書いたように、知らないうちに近代兵器の便利さと時間短縮の時代の潮流に染まっている自分を再認識したのだ。
翌日、母のところにきた訪問看護師に、電子体温計の交換電池が買えなかったこと、水銀式が出てきたことを話した。
「そうですよね。便利さには欠けても、クラシックなものが最後は一番頼りになるんですよ。体重計もそうですし」「体温計も、水銀の方が正確ですし」
そういいながら、母の腕に血圧計を巻き、空気を入れ、聴診器を当てながら血圧を計り始めた。そう、これもまた最も正確な方法なのだろう。
     *     *     *
うれしい後述談がある。
前回の私のブログを呼んだ友人が、昨日電話をしてきてくれた。
「探している電池、夫が予備に買ってストックがあるから送ってあげるわ。こういう非常事態の時、困っている時はお互いさまよ」
その上、ご主人が電話口に出て「体温計を分解するための小さいドライバーが必要だと思うので、一緒に送りましょうか?」とまで尋ねて下さった。
ドライバーは、夫がメガネ用に使っていたものがあったので丁重に辞退したが、何とありがたい救いの手だろう!
Aさん、ありがとう!!
そして、こんな私のブログを読んでくださっていることにも感謝♡