唐突だが、もし卵が一個60-70円したら、私たちはどうするだろうか?
日本では、卵は低価格で安定している食品の一つだとおもう。先進国の中には、そうではない国もある。2008-2011年に住んだスイスがそうだった。スイスのスーパーで、卵の値段に驚いたのを思い出す。(どうも、世界一高いらしい。)
スイス産の卵は、国の規定により、屋外で放し飼いにしている鶏たちから採られたものだ。鳥たちが狭いケージに押し込められて産卵だけを強要されるのは、動物福祉に反しているという考えからだ。高値の理由を聞いた時、鶏に至るまで、QOLを尊重する国民性に驚きつつ、敬服した。日本では、鶏をカゴに入れて飼育する「ケージ飼い」が主流らしい。
[のびのびと野原を駆け回る鶏のイラストのスイスの卵。2010年当時でも、4個で2.75スイス・フラン、約¥300していた。]
こうしてスイスで「動物福祉」=「アニマルウェルフェア(AW)」という言葉を初めて知ってから10年以上経つが、今になって、日本のメディアで取り上げられている。元農水大臣の収賄事件を巡ってだ。AWを尊重した飼育は、日本の養鶏業者には受け入れがたい提言だったわけだ。
これは、突き詰めれば、消費者の私たちが、生き物としての鶏が置かれている環境に思いを馳せ、たとえ値段が高くなっても、ケージ飼いの鶏の卵はボイコットする強い意思を貫けるかにかかっていると言える。
スイスのスーパーには近隣国から輸入されたケージ飼いの安い卵も売られている。しかし、多くのスイス人は高いスイス産の卵を選ぶときいた。また、マルシェでは、空の卵パックを持参し1個、2個と一個単位で買っていく人も見た。
このたび日本で負の結果ながらアニマル・ウェルフェアが取りあげられ、改めて日本人の生き方と価値観が問われていると感じている。