正月映画というと明るく娯楽性の高いものを連想すると思う。映画三昧の正月だったが、ちがった。新年始めの二日間に娘がチョイスした映画を三本観たが、二本は重かった。前述のとおり、1本目は元日の朝、まずは劇場で鑑賞。「ラーゲリより愛を込めて」は無実の罪でシベリア抑留を強いられた元日本兵たちの実話に基づいた話だ。その深く重くそして悲しい内容に心が揺さぶられた。正月早々に観ようと思う人は少数派だと思うが(それでも私たち以外に20名ほどいただろうか)、敢えてチョイスした娘に意外性とまじめな側面を感じた。以前も、長崎の原爆を題材とした「母と暮せば」を二人で映画館で見た。嵐のファン、俳優・二宮和也のファンであるからだけではない気がする。
私は日頃ほとんど映画を見ない。だからこそ娘は、連続で泊まりにくる時は、いつもDVDを2-3本借りてきてくれる。二日の午後に観た二本目の映画は「浅田家!」。やはり二宮君主演だ。これも実話だが、ラーゲリと対極の明るく楽しい内容。だが同時に、家族とは?家族写真の持つ意味とは?失いたくない最も大切な思い出とは?と再考させられる。東日本大震災の津波による被害と被災者たちも描かれているから尚更だ。写真整理協会関連の講座の中でたびたび話題に上った実在する浅田家の家族写真。ようやく「このことだったのか!」とわかった。紹介してくれた娘に深く感謝。
同日夜に観た三本目は草彅剛主演の「ミッドナイトスワン」。再び暗くて重い。現代社会の闇を赤裸々に描き、観る人の心が天秤にかけられているような緊張感があった。
二日間で三本見終えてみて、エンタメというよりも、ボールをずっしりと受け止めたような心境だ。そしてこの三本をチョイスした娘――障害者手帳を持つ娘――にとって、映画(や漫画)は、娯楽となる一方で、社会や歴史を仮想体験的に学ぶ教科書の役割を果たしていたのだということに、いまさらのことのように気づかされた。
心を何度も揺さぶられ、多くを考えさせられ、それでもなお、娘と二人で鑑賞する楽しさをひときわ味わえた今年の正月休みだった。