今朝のNHKの「あさイチ」をご覧になられたでしょうか?「わたしの台所物語」がテーマ。このテーマで応募した視聴者の中から選ばれた男女三人、全く違う家族の歴史を歩んできた方々の台所を訪問しての取材。まさに三人三様、十人十色。ウンウンと大きくうなずく言葉あり、ジーンと胸に迫る場面あり…、それぞれに書きたいことが沢山ある。しかし今日のところは、登場した一人目の「ひろみさん」が握りしめていた使い込まれた木ベラに感化されての私の思いを書きたいと思う。
ーーというのは、昨日偶然にも、同じような木ベラを握って、家族の歴史を振り返りながら料理を作っていたからだ。あるグループからのリクエストで、実母の十八番だったパエリアをメインにしたランチ会を開催した。料理教室では、皆さんの家庭にある大きめのフライパンや身近な食材でもできる作り方をお教えしてきたが、昨日は久々に母から受け継いだ直径38㎝ある大きなパエリアパンにお米3カップ(600㏄)分とワンランク上の食材を使ったパエリアを作った。そこで登場したのが、普段ほとんど使わなくなっていた古い木ベラ。パエリアにはコレ!と母が言っていたわけではないのだが、テフロン加工されていない母のパエリアパンで調理するとき、一番使い勝手がいいのだ。結婚後の40年以上の間に「わたしの愛用のヘラ」は別の3本に落ち着いていたし、それぞれに年季が入った姿になっている。しかし、ノスタルジーからではなく、単に実用性からの理由で、もっと古い木ベラを手に取った。肉に焼き目を付けたあとに玉葱を加えて炒める段になり、なべ底のおいしそうな肉のコゲを野菜に絡ませながら「やっぱりコレしかないわよね~」と呟いた。
そして一夜明けて見た「ひろみさん」の木ベラ。年季の入りぶりも形も同じだ!「やっぱりそうよね~」とおもった。更に、数日前に作成したメニューカードの言葉にハッとした。
「――家族の歴史がつまった一皿ーーパエリア・コマツ風2024」
そう、料理だけではなく、道具にも歴史がつまっていたのだ。
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ちなみに「母の十八番のパエリア」というブログを、コロナのパンデミックで世界中が戦々恐々としていた2020年5月に書いている。今日読み返してみて、いくら皆さんが絶品と誉めてくださっても、私は母のパエリアを作れないし、超えられないと改めて思った。だから一ランク下の私流という思いを込めて「(旧姓ではなく)コマツ風」としてみなさんに紹介しているのだ。
https://bistrotkenwood.hatenablog.com/entry/2020/05/11/175102