今日は39回目の結婚記念日のはずだった。
39年前、満開の桜の中、千鳥ヶ淵から遠くないホテルで結婚式を挙げた。


そして数年前、千鳥ヶ淵に近い場所に一時的に居住したことから、東京屈指の桜を、固いつぼみの時期から、お堀に花筏となって浮く姿になるまで、逐一みることができた。
この年が、夫との最後の結婚記念日になってしまった。それなのに、この美しい桜を二人で愛でる機会を逸してしまった。
夫は最後の力を振り絞って仕事、私は(夫のたっての希望で)自宅のリフォーム敢行と、夫のサポートに専念。
いまでも悔いが残る。
しかし、写真館で何とか記念写真を撮ることはできた。
かつて結婚式の日に撮った写真の中に、夫が気に入っていたモノクロの写真があった。新郎新婦が二人そろって椅子に座っているモノクロ写真。既にカラーが主流の時代だったから、モノクロであることも、ポーズも珍しかった。
最後となってしまった結婚記念日に、夫は同じポーズで写真を撮ろうと言った。before & afterの写真を、リフォーム後に完成する、夫の「老後の趣味の部屋」に並べて飾りたいというのだ。
出来上がった写真を、予定通りに古い写真と並べて飾り、夫は満足気に眺めた。
今でも同じ棚に飾ってある。
けれども「夫の老後の趣味の部屋」はその目的として使われることはなかった。