先週、睡蓮が咲く池でニューフェースに出会えた。バンの親子だ。
親鳥は、つややかな真っ黒な羽に覆われたなボディーに鮮やかな赤と黄色のくちばしがひときわ目立つ小柄な水鳥だ。首をふりながら泳ぐ姿に愛嬌がある。そして、睡蓮の葉の上を軽々と渡り歩く。
ヒナたちも一人前の顔をして、葉の上をあちこち歩き回っていたが、頭と体にまだ産毛が残る。「みにくいアヒルの子」と呼ぶほどではないが、ぬいぐるみのような可愛らしさはない。カルガモのヒナがいかに愛くるしいかと再認識する。
親も子も、体の大きさに比して、足が驚くほど大きい。その足ゆび一本一本をしっかりと広げて歩くから、葉が沈むことなく歩けるわけだ。雪国でかんじきをつけて歩くと、雪の中に足が沈まないのと同じ原理だ。
しばらく眺めていて、「この光景はデジャブだ(deja vu、見たことがある)!」と思った。そうなのだ。ジヴェルニーの睡蓮の葉の上をフランスのバンのヒナが、同じように歩いていたことを思い出した。よほど睡蓮と相性がいい鳥のようだ。
思いがけず、睡蓮がまたまた私の心をジヴェルニーへとワープさせてくれたひとときとなった。